【ボーカルレジスターを知ろう】②チェストボイス、ヘッドボイス、ファルセット
ボーカルレジスター(声区)の中でも歌唱においてとても大事なレジスターサウンド
チェストボイス: 日本語では胸声(ボイスサイエンス用語ではmodal resister)
ヘッドボイス: 日本語では頭声(ボイスサイエンス用語ではloft resister)
という、声区をご説明したいと思います。
その前に前回の復習
ボーカルレジスターの種類
ボーカルフライ(グロタルフライとも呼ばれる)
☆チェストボイス⇦今回☆
ミックスボイス(ヘッドミックス、チェストミックス/ベルトボイス)
☆ヘッドボイス(ファルセット)⇦今回☆
フラジオレット(フルートとも呼ばれる)、ホイッスルボイス
チェストボイスとは
チェストボイスの「声の音色や音質」は、英語ではよく「heavy」と表現されます。
ソウルフルなサウンドをイメージしてみてください。
直訳だと「重みのある」ですが、「パワフルな」「力強い」という表現が適切かと思います。
チェストボイスのの発声時の「喉頭筋の働きや声帯の状態」は、どうなっているのでしょうか?
チェストボイスは、甲状披裂筋(こうじょうひれつきん)の働きが優位で、声帯が厚くなります。
ギターやバイオリンの弦で例えると、低音域の弦で太い弦です。
中低音の声を出す時に、声帯は相対的に厚みがあり、張りはゆるく声帯の長さは短くなります。
英語では、Thyro-arytenoid(頭文字をとってTA)と言います。
ヘッドボイスとは
ヘッドボイスの「声の音色や音質」は、「light」つまり「軽やかな」「柔らかい」「優しい」と表現され、声楽やオペラのソプラノのサウンドをイメージしてみると良いでしょう。
ヘッドボイスは輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん)の働きが優位で、声帯は薄く張りが強く、徐々に長くなります。
ギターやバイオリンの弦では、高音域の弦で細い弦です。
英語ではCrico-thyroid(CT)と言います。
ファルセットとは
ファルセットのfalseの意味は「偽りの」という意味です。元々は、クラッシック音楽の中で、ソプラノ歌手のように高音で歌えたカウンターテナーのような男性歌手に対して、「女性みたいに高い(本来は低い声で歌うにも関わらず)偽りの声」という意味合いで表現されたことが由来だそうです。
前回の動画でお伝えしたように、「ヘッドボイス」はボイスサイエンティストや(speech pathalogist)言語療法士の中では、ロフトレジスターと呼び、その中にファルセットも含まれています。
つまり、発声時の状態が同じなので、
ファルセット=ヘッドボイス
となります。
しかし、色んな人や団体が色んな意味合いでファルセットという言葉を使っているので、定義が混在しているのが現状です。
ただ、ボイスサイエンス上、輪状甲状筋が優位の働きで声帯が薄く長い状態で、声の「音色や音質」も柔らかく高音域という声区の特徴は、ヘッドボイスです。
そのためニューヨークボイストレーニング ではファルセットはヘッドボイスの一環だとして、「高音域で優美な声で歌いたい」と思う方にはヘッドボイスのトレーニングを行います。
それが、高音を楽に出せることにつながるので、ご自身で取り組まれる場合もヘッドボイスのトレーニングをおすすめします。
喉頭筋について
「喉頭」とはゴクンと飲み込んだ時に動く喉仏です。
喉頭の中にある筋肉のうち、「甲状披裂筋」が働くと、声帯は、厚く、ゆるく、短くなります。ピッチ(音程)は低くなります。
声帯筋が働くと、声帯の張りが強くなりピッチは高くなります。
「声帯」とは喉頭の中に入っている2つのひだ(vocal folds/cords)です。
「輪状甲状筋」が声帯を引っ張る働きをすると、声帯は薄く、張りが強くなり、長くなります。そのためピッチは高くなります。
しかし、トレーニング中にそれらの喉頭筋を意識する必要は必要はありません。
なぜなら、トレーニング中に他にもっと意識を使うべきポイントがたくさんあるからです。
喉頭筋への集中する事によって他に優先して必要な意識を持つことが阻害されるデメリットの方が多くみられるため、ニューヨークボイストレーニング のレッスン中では喉頭筋にはほとんど触れません。まずは、「そうなんだなぁ」程度に知っておくだけで大丈夫だと思います。
レジスターサウンドの音色を聞き分ける力と、それを出すようになる実践的なエクササイズを行うことの方がより重要なので、効果を出すために必要な、発声時の発声器官のフォームや使い方、そして身体の感覚を高めていくことを優先しています。
ご自身で練習する時も、特に初心者の方は喉頭の筋肉だけに囚われてそこに全集中するようなことは避けてください。
まず大事なのは、自分がチェストボイスが得意なのか、ヘッドボイスが得意なのか、もしくはどちらもバランスが取れているのかを分析してみてください。
色んなプロのシンガーの声をレジスターサウンド の視点からたくさん聞いて、聞き分ける力を身につけてください。イヤートレーニングによって聞く情報が多くなることも発声の向上に繋がります。
地声と裏声
チェストボイスは、いわゆる「地声」、ヘッドボイスは「裏声」とイメージしていただいて大丈夫ですが、
ニューヨークボイストレーニングでは「地声」「裏声」という言葉は使いません。
地声というと、聞き分け方が大雑把になり、チェストボイスを指すのかチェストミックスを指すのか、人によって指す音色が変わってしまいます。
裏声も同様、ヘッドボイスなのかヘッドミックスなのか、息混じりのウィスパーボイスか、息漏れブレシーボイスかの聞き分けもできていません。
次回のミックスボイスの回で詳しく触れますが、ミックスボイスの中にもチェストボイス優位のミックス、ヘッドボイス優位のミックスと細分化した聞き分けが必要です。
チェストボイスもヘッドボイスもどちらも重要なレジスター
ここで、「チェストボイスは必ず低い声でしか歌えないのか? または、ヘッドボイスは必ず高い声でしか歌えないのか?」という疑問が出てくる方もいるかもしれません。
それは、「違います!」
よく訓練されたシンガーであればあるこそ、低音域でもヘッドボイスの音色で楽に歌えるし、高音域でチェストボイスの音色でも自由自在に歌えます。
続くボーカルレジスター記事では、ミックスボイスについてです!
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