【腹式呼吸】息の吐き方=ブレスコントロールが重要
腹式呼吸に時間をかけすぎるボイストレーニングの成果は低い
『腹式呼吸法』は、頑張って頑張って到達するものだという思い込んでいませんか?
歌が上手くなるために、”腹式呼吸をできるように” と頑張っている方は、
残念ながら、遠回りのトレーニングを行っているかもしれません。
なぜなら、
人はリラックスし副交感神経優位な状態だと、自然と腹式呼吸になっているからです。
つまり、
寝たり、身体が脱力したような状態では、誰しも日常的に腹式呼吸は出来ていることの方が多いのです。
『ロングトーンが続かない』=歌っていて息が苦しい方の解決法
『ロングトーンが続かない』とお悩みの方は、”吸い方が足りないから”と思われているかもしれません。
そして思い切り吸い込んでみるも、息が続かない。
しかも、息が足りなくなりながら無理やり歌おうとすると、とても苦しいですよね。
それは、身体の力みに繋がります。
力んだ状態で歌い続けると、さらに息が続かず、喉は痛くなり、身体全体も疲れてしまいます。
そんな状態で、楽しんで伸び伸びと歌うということは難しい。
では、どうしたら良いでしょうか?
早速、解決法をお伝えします。
息が続かない、歌っていて苦しい状態を楽にするための解決法
- 呼気をコントロールして出す『ブレスコントロール』を意識する。
- 喉や首肩周りを緊張させない吐き方と吸い方をトレーニングする。
- 肋骨の開きを保った姿勢『歌の呼吸の支え』ができるようになる。
- 呼吸と発声がスムーズに行えるために頭・肩・腰・膝の全身のバランスの良い姿勢になる。
これらを全て同時に行えることで、息が長続きしてロングトーンも楽に歌うことが可能になります。
「息が続くように」と、腹式呼吸だけを長時間行うようなボイストレーニングは非効率的です。
腹式呼吸が上手くなれば、歌がうまくなるというよりも、
「歌がうまい人は腹式呼吸も出来ている」
といった方がいいかも知れません。
歌の呼吸の支え方の身体の使い方を意識したブレスコントロール力を高めることがより重要です。
それでは、一つずつ解説していきます。
①息の吐き方=『ブレスコントロール』が重要
歌声が続かない方で、「息を沢山吸えなくて。。」と言われる方が、沢山います!
しかし、歌の場合には、通常のスピーキング(話す)と違い、ロングトーンやフレーズを歌い切るための吐く息のコントロール力が必要です。
つまり、
息が続かない≠大きく吸う、
ではなく
吐き方が重要です。
なぜなら、呼気=声のエネルギー源 だからです。
声の仕組みは、呼気によって声帯を震わせて、その振動が声帯よりも上の身体の空間(声道)で響く事で声が生まれます。
腹式呼吸自体は、元々人間が自然とできる呼吸なのでそれほど難しくありません。
しかし、歌うときに必要な呼気をコントロールして吐くスキルの『ブレスコントロール力』は喋る時とは身体の使い方が違います。
長いフレーズやロングトーンを余裕を持って歌えるような、一定の吐き方を訓練すると同時に、体が緊張しないようにリラックスした状態で行えることが必須となります。
歌声が続かない方の多くが首肩周りが緊張してしまっています。
それでは、どうしたらリラックスした状態でブレスができるようになるかを続けてお伝えします。
②喉や首肩周りを緊張させない吐き方と吸い方
息をたくさん吸おうとすると喉周りから全身が力みやすい!
肺と胸郭の間の胸膜腔(きょうまくくう)は、大気圧より常に圧力が低い陰圧です。
胸膜腔の内圧が高くなり、息を吐き出して肺は小さくなったら、陰圧に戻ります。
つまり、吐いたら、その分自然と息は入ってきます。
”頑張って吸おうとする”ことで、力みが身体に起こる場合が少なくありません。
息が続かないから必死に吸うのではなく、喉周りや首周り、肩まわりが緊張しないよう行うように以下のトレーニングをトライしてみましょう。
首や肩まわりの力みをとりながらブレスコントロール力を鍛える具体的な方法の例:
- 呼吸が妨害されない程度に、首を軽く左右に振ったり前後に倒して呼吸を続ける。力みが出やすいところは、首の動きが止まります。常にゆらゆらと動かしながら力みが入りにくい状態で、吐く息を段々と長く一定に吐けるように練習していきましょう。
- 肘の関節をブロックしないようにして、腕の重みを感じながらゆらゆらと肩を軽く揺らしながらブレスコントロールの練習をする
これをブレスコントロールの練習や歌いながら、鏡の前で行ってみてください。力んでいるところは動きが止まりがちです。常に体と息のフローを感じて、ブロックすることがないように行いましょう。
③『歌の呼吸の支え』
歌唱時の呼吸法の身体の使い方では、肋骨を開きをキープすることが重要=『歌の呼吸の支え』
肋骨を広げてそのままキープした状態で腹式呼吸をおこないます。
息を吸う際に、肋骨は水平方向に広がっていくため高い位置になります。
肋骨を高い位置でキープしながら、吐いてお腹周りを360度全体を引き締めて絞っていき、骨盤底筋群(女性の場合は膣周りを意識するとやりやすい)も同時に引き締めていきます。
吸うときは、その逆でお腹周りを360度大きく膨らまして骨盤底筋群を緩めていきます。
初めは身体の使い方を意識しながらブレスコントロールの練習を行なったり歌ったりするのが難しいかもしれませんが、常にリマインドを行いながら、最終的には意識しなくてもできるように身体に覚えさせるように訓練が必要です。
④呼吸と発声がスムーズに行えるために頭・肩・腰・膝の全身のバランスの良い姿勢
ボディマッピングでは、バランスをとるための6つの場所を正確に頭の中にイメージをつけて身体のバランスをとっていきます。
『バランスをとるための6つの場所』
歌っているうちに体が緊張してしまうという方、
首や肩周りを中心にガチガチに硬直状態になって苦しいのであれば、
姿勢の矯正、マッサージやストレッチを取り入れながら
発声時の緊張を取っていくために『身体への認識力を高めていく』ことが必要です。
常に呼吸を意識しながら、身体の色々な場所に意識を向けながらストレッチやエクササイズを行うヨガの動きは、歌う身体のために必要な『身体への認識力を高めていく』ことにぴったりです。ぜひ取り組んでみてくださいね。
『歌うカラダのためのヨガ』レッスンも行っています:
※ヨガは、誰かと比べて競争するような類のスポーツではないので、体が硬いからと躊躇される方にこそおすすめです。ご自身の体と向き合う時間としてお気軽にご利用くださいね!
おまけ:よくある誤解をお伝えします。
誤解1 胸式呼吸はダメなんじゃないの?
と疑問に思う方もいると思います。
まず胸式呼吸とは、肋骨の間の筋肉である肋間筋を働かせて(収縮させて)胸腔を広げて息を吸い、肋間筋を緩めて(弛緩させて)肺が小さくなって息を吐く肋骨の動きが優位になった呼吸です。
腹式呼吸は、腹筋と骨盤底筋群を緩める(弛緩させる)ことで横隔膜が下がり肺が膨らんで吸い、吐く時には腹筋と骨盤底筋群を収縮させて息を吐いて肺が小さくなります。
通常は、腹式呼吸の横隔膜優位が7〜8割、胸式呼吸の肋骨の開閉が2〜3割で使っていると言われます。
胸式呼吸が優位になったときは、緊張した時や全速力で走った時のような早くて浅い呼吸となるため、
歌唱時にリラックスした状態を保つため腹式呼吸優位を意識することは必要ですが、
全てが完全な脱力状態ではなく、使う筋肉(外肋間筋を収縮させたまま肋骨を高い位置でキープ)はしっかりと使って『歌の呼吸の支え』を作ることが必要です。(忘れた方は、上記③をもう一度ご覧ください。)
誤解2 胸式呼吸は肩が上がる
「胸式呼吸で肩が上がるからダメだ」という理屈を見聞きしたことがあるかもしれません。
しかし、胸式呼吸≠肩が上がる です。
胸式呼吸だから肩が緊張して上がってしまうわけではありません。
人体の仕組み上、肩は上腕骨(肘より上の腕)と肩甲骨と鎖骨で繋がっており、肋骨の上に覆い被さるようにあります。
胸鎖関節で胸骨に繋がっていますが、肩が上がっている状態(肩をすくめた動き)の時には肩甲骨と鎖骨が上がっていますが、実は肋骨は連動しては動きません。
つまり、肋骨を開いても、肩甲骨と鎖骨は連動して動くわけではなく、肩周りと肋骨の開閉は別々に動かすことができます。
肩周りが緊張して肩が上がっている方は、まずは肩を下に落としたまま、肋骨を膨らませたりしぼませたりできるように身体の使い方の練習に取り組んでみてください。
それでは、まとめに入りましょう!
まとめ
息が続かない、歌っていて苦しい状態を楽にするための歌の呼吸:
- 呼気をコントロールして出す『ブレスコントロール』を意識する。
- 喉や首肩周りを緊張させない吐き方と吸い方をトレーニングする。
- 肋骨の開きを保った姿勢『歌の呼吸の支え』ができるようになる。
- 呼吸と発声がスムーズに行えるために頭・肩・腰・膝の全身のバランスの良い姿勢になる。
これらを全て同時に行えることです。
そのために、
- 肋骨の間にある肋間筋の感覚
- 吐く息をコントロールする横隔膜の動きのイメージ(ボディマッピング)
- 鋭い音を立てて吸わないようにする吸い方の意識
- 頭から足まで重力が通りやすい重心やバランスの取り方
の意識を高めていきましょう!