【ボーカルレジスターを知ろう】④ボーカルフライ、ベルトボイス
今回は、ボーカルフライ(グロタルフライ)、ベルトボイス(ベルティング)についてのお話です。
(前回までの復習)
ボーカルレジスター(声区)の種類:
☆ボーカルフライ(グロタルフライとも呼ばれる)⇦今回☆
チェストボイス
☆ミックスボイス(ヘッドミックス、チェストミックス/ベルトボイス(ベルティング)⇦今回☆)
ヘッドボイス(ファルセット)
ホイッスルボイス(フラジオレット、フルートとも呼ばれる)
グロタルフライ/ボーカルフライ
Glottal Fry/Vocal Fryの声区は、チェストボイスよりさらに低い音域で、creaky(クリーキー)なサウンドと表されることがあります。(ギギギというドアが軋むような音)
ボイスサイエンス上での呼び方はpulse resister と言われ、喉頭筋の輪状甲状筋が弛緩しており、その時の声帯の状態は、「分厚く緩んだ」状態です。
中低音域が苦手な方は、このグロタルをどうやって出すかがすぐに掴み取りにくい場合が多いです。
そして、無理やり出そうとしたときに、喉周りの筋肉や舌根が力みすぎて、すぐに喉が痛くなったり咳こんだりする場合があります。
実際はすごく楽に出せるものなので、その時は即刻やめてください。
まずは、出しやすい低音域でハミングしたりリップロールやタングトリルをして一度リセットして、チェストボイスのトレーニングを優先させることをおすすめします。
『Glotal fry (vocal fry)』の声帯の動きの動画:
続いて、ベルトボイス、ベルティングについてです。
ベルトボイス/ベルティング
ベルトボイス、ベルティングという声の特徴は、とにかく「LOUD」ー大きいです。
そしてその声区は、チェストボイスと、チェストミックスにおいての音量が大きい状態のことです。
つまり、他に新しい別の声区があるわけではありません!
前回の復習:
チェストミックスの中で、さらにloud=音量が大きい状態を、ベルトボイス(Belt voice/Belting)と言います。
ちなみに、ベルトボイスの中で、
チェストミックスと同様の声質を、ライトベルト(weightless belt/healthy belting)
C5までのチェストレジスターのままの発声を、ハイベルト(high belt)といい、チェストミックスとは分けて考えます。
somatic voice work℠より
音量について
音量(Volume)つまり声量 はデシベルという単位で表すことができます。0dbから人間の耳で聞き取ることができて50dbが会話程度、
70dsbでオーケストラのシンフォニーで130dbを超えると苦痛になる音の大きさになるそうです。
昔マイクがなかった時代は、大きな会場で声を後方の観客席に届かせる必要がありました。そのためマイクがなかった時代のプロシンガーには音量が110-115dbは必要だったそうです。
でも、マイクの登場で、ポップ、ロック、ジャズなどのようなCCMスタイルの歌では、音量が大きくないとプロとして通用しないという状況は無くなりました。
もちろん、声量がある方が迫力が出るので、全く必要ないというわけではないですが、例えばささやくような歌い方の曲も少なくないですよね。
マイクのない時代には必須だったベルトボイスですが、今は音楽性によってそこまで必要でない人もいると思います。
しかし、パワフルに大きな声量で歌いたいという方や、ダイナミクスをつけるため音量が必要な場合には、どうやったら大きなこえで歌えるようになるか?
声量は、air pressure によって作られます。つまり、肺から出た息=呼気(英語ではexhale)の空気圧が高い状態です。
でも、shouting/yellingつまり、ただ大声で歌おうとすると、通常、喉にダメージを受ける方の方が多いのでおすすめしません。
なぜなら、Air plessureが大きいと声帯は強い抵抗が必要ですが、それを首回りの筋肉を力ませてしまう方が多いからです。
では、どうやったらいいかというと、まずはどんな音域でも楽に出せるようにトレーニングをして、楽に発声できる状態を一定期間保った後に、つまり筋肉のコントロールバランスが整ってから少しずつ音量を大きくしていきます。そうすると、筋肉の負荷が少ない状態で楽に声量を出すことが可能です。
声量が欲しい方は、とにかく声量を優先させたいという気持ちが大きいと思います。悩みを解消したいという思いはすごく分かりますが、
レッスンで生徒さんに良く出す例が、ジムにいってウェイトトレーニングをやったことない人がいきなり100kgのベンチプレスのトレーニングをすると負荷がかかりすぎますよね?
だから30kgとか50kgとか少ない重量から始めていって筋トレしていくことが大事ですよね?それと同じ手順ですとお伝えしています。
喉頭筋は、大胸筋や上腕三頭筋などのように人間の身体の中で大きな筋肉ではなく、とても小さくて繊細な筋肉です。
なので、自分の感覚を高めながら少しずつ負荷をかけていくことが着実な声量向上のために重要です。
そしてとても大事なことは、喉頭筋を解剖図で位置を知ったりどのように動くかを知る「ボディマッピング」は有効ですが、
「喉頭筋の動きは感じることができない」ので、
甲状披裂筋や輪状甲状筋などの喉頭筋を「自分で意図して動かそう」とすることが出来ません。
そのため、発声器官や身体全体の筋感覚を高めながら包括的なボイストレーニングが必要になります。
続いての記事は、ボーカルレジスターの最後の記事フラジオレット、フルート、ホイッスルボイスになります。